まだ「TikTokはダンス動画を見る若者向けアプリ」だと思っていませんか?その認識のズレが、大きな機会損失を生んでいるかもしれません。今、TikTokはB2B決裁者や高所得者層が情報収集を行う、有力なビジネスプラットフォームへと変貌を遂げました。
今回は、単なる再生数アップのテクニックではなく、B2B・高単価商材に特化した「売上に直結する」運用ロジックを完全公開します。動画での信頼獲得から、LP(ランディングページ)への誘導、そして成約に至るまでの「導線設計(ファネル)」を徹底解説しました。
「バズ」よりも「成約」を求める経営者・マーケティング担当者の皆様へ。これは単なるSNS運用のマニュアルではなく、24時間稼働する自動営業システムを構築するための戦略書です。ぜひ、新しい集客の扉を開いてください。
なぜ今、B2B企業がTikTokに参入すべきなのか
多くの経営者やマーケティング担当者とお話しする中で、いまだに根強く残っている誤解があります。それは「TikTokはダンスやリップシンクをする若者のためのアプリであり、ビジネス、特にB2Bや高単価商材には適さない」という思い込みです。
しかし、世界のトレンド、そして日本のWebマーケティングの最前線を見ている私からすれば、その認識は大きな機会損失を生んでいると言わざるを得ません。今、TikTokは単なるエンターテインメントの場から、「情報検索」や「学習」、そして「ビジネス上の意思決定のきっかけ」を作るプラットフォームへと進化しています。
「若者のダンスアプリ」という誤解と機会損失
確かに数年前までは、TikTokのメインユーザーは10代から20代前半が中心でした。しかし、現在は30代、40代、そして50代の利用者が急増しています。総務省のデータや各マーケティング会社の調査を見ても、利用者の平均年齢層は年々上昇しており、可処分所得の高い層や、企業の決裁権を持つ層が日常的にアプリを開くようになっています。
彼らはダンス動画を見ているだけではありません。ビジネスのノウハウ、業界の最新トレンド、業務効率化のツール、あるいは自身の資産形成や健康管理に関する情報を、TikTokのショート動画を通じて収集しています。
ここで重要なのは、プラットフォームのアルゴリズムの優秀さです。TikTokのレコメンドシステムは、ユーザーの興味関心を極めて高い精度で分析します。つまり、普段からビジネス系の情報に触れている経営者や担当者のフィードには、自然とB2Bサービスの紹介やビジネスハックの動画が流れるようになっているのです。ここに参入しない手はありません。
B2B決裁者もTikTokを見ている現実
想像してみてください。企業の決裁者や高額商品の購入検討者も、24時間仕事のことだけを考えているわけではありません。移動中、就寝前のリラックスタイム、あるいは休日に、スマホで動画を眺める時間があります。
FacebookやLinkedInは「仕事モード」で見るため、広告に対して身構えてしまうことがあります。一方で、TikTokは「リラックスモード」で見ていることが多いです。ガードが下がっている無防備な状態で、自社の課題をズバリと言い当てる動画が流れてきたらどうでしょうか。「お、これは自分のことだ」「こんな解決策があるのか」と、強烈に印象に残る可能性があります。
B2Bマーケティングにおいて、リード獲得(見込み客の獲得)のコストが高騰し続ける中、TikTokはまだ競合が少なく、比較的安価に、かつダイレクトに決裁者の懐に入り込める数少ないブルーオーシャンなのです。
目指すのは「バズ」ではなく「着実なリード獲得」
今回お伝えしたいのは、再生数を爆発的に伸ばす「バズ」の起こし方ではありません。B2Bや高単価商材において、無差別なバズはむしろノイズになります。
お問い合わせ対応の工数だけが増え、成約に繋がらない学生や冷やかしからの連絡が殺到しても意味がありません。私たちが目指すのは、自社のサービスを本当に必要としている「未来の顧客」だけに動画を届け、信頼を構築し、スムーズに問い合わせや資料請求へと導く「ファネル(導線)」の設計です。
ここからは、その具体的な設計図を一つずつ解説していきます。
再生数=売上ではない!B2B運用のKGI・KPI設定
TikTok運用を始める際、9割の企業が最初に陥る間違いがあります。それは「とにかく再生数を稼ごうとする」ことです。しかし、ビジネス、特にB2Bや高額商品において、再生数は必ずしも正義ではありません。
陥りがちな「再生数至上主義」の罠
エンターテインメント系のYouTuberやインフルエンサーであれば、再生数は広告収入に直結するため重要です。しかし、自社商品を売ることが目的の企業アカウントにとって、再生数はあくまで「通過点」に過ぎません。
例えば、流行りの音源を使って社員が踊る動画が100万回再生されたとします。しかし、その視聴者の大半が「面白いな」「可愛いな」と思っただけで、あなたの会社が何のサービスを提供しているのか理解していなければ、そこから売上は1円も生まれません。
一方で、業界の専門的な悩みを解決する地味な解説動画が、1,000回しか再生されなかったとします。しかし、その1,000人が全員、その悩みを深く抱えている企業の担当者だったとしたらどうでしょうか。そこから10件の問い合わせが生まれ、1件の数百万円の契約が決まるかもしれません。
B2B運用において重要なのは、「誰に」見られているかです。再生数という分かりやすい数字(虚栄の指標)に惑わされず、本質的な成果指標を見定める必要があります。
B2B運用で追うべきは「視聴完了率」と「保存数」
では、どの数字を見れば良いのでしょうか。アルゴリズム的に優遇されるためにも、そしてビジネス的な関心度を測るためにも、私が特に重視しているKPI(中間目標指標)は「視聴完了率(維持率)」と「保存数」の2つです。
視聴完了率(維持率)
動画を最後まで見た人の割合、あるいは平均視聴時間です。これは動画の「質」と、ターゲットへの「適合度」を表します。特にB2Bの解説動画において、最後まで見られたということは、その視聴者が動画のテーマに対して強い関心や課題意識を持っていたことの証明になります。最後まで見たユーザーは、プロフィールへの遷移や、次のアクションを起こす可能性が格段に高まります。
保存数
これはTikTokにおける「ブックマーク」機能です。ユーザーが「後でまた見たい」「この情報は役に立つから取っておきたい」と思った時に保存ボタンを押します。B2Bや高単価商材において、この「保存」は最強のシグナルです。
エンタメ動画は一度見て笑って終わりですが、ノウハウや知識は「保存」されます。保存数が多い動画は、TikTokのアルゴリズムからも「有益な情報」と判断され、似たような属性を持つユーザー(=見込み客)へさらに拡散されやすくなります。再生数よりも、この保存数を積み上げることが、質の高いリード獲得への近道です。
質の高い「濃い」100再生が、薄い1万再生に勝る理由
マーケティングの世界には「リードの質」という考え方があります。TikTokも同様です。
例えば、不動産投資のコンサルティングを販売しているとしましょう。「誰でもできる簡単貯金術」のような大衆受けするテーマで10万再生を出しても、小学生から主婦までターゲット外の層が多く含まれ、成約には繋がりません。
しかし、「年収1000万円以上の会社員がやるべき節税対策としての不動産投資」というニッチなテーマで動画を作れば、再生数は伸びないかもしれません。おそらく数百再生で止まるでしょう。ですが、その数百人は間違いなくあなたのターゲットです。
TikTokのアルゴリズムは学習します。「この動画はこういう層に長く見られている」というデータを蓄積し、徐々にその「濃い」層へ正確に動画を届けるようになります。ですから、初期段階で再生数が少なくても焦る必要はありません。ターゲット層にしっかり刺さっているかどうかが重要です。
最終ゴール(KGI)からの逆算思考
運用を始める前に、必ずKGI(最終目標達成指標)を設定しましょう。 「TikTokで有名になること」はKGIではありません。「月間のリード獲得数を30件増やす」「Web経由の商談化率を10%引き上げる」「採用エントリー数を倍にする」といった、具体的なビジネス上の数字がKGIになります。
このKGIから逆算して、今のTikTok運用が正しいかどうかを判断します。
KGI:月間商談数 5件
必要な問い合わせ数:50件(商談化率10%)
必要なLPへの遷移数:5,000件(CVR 1%)
必要なプロフィール閲覧数:50,000件
必要な動画再生数:…
このように数字を分解していくと、やみくもにバズを狙う必要がないことがわかります。どの数字がボトルネックになっているのか。再生数は足りているのにプロフィールに飛んでいないのか、プロフィールには来ているのにLPへのリンクがクリックされていないのか。
この逆算思考こそが、WebマーケターがTikTok運用を行う最大の強みです。感覚ではなく、ロジックで運用を改善していく。そのための土台作りが、KGIとKPIの正しい設定なのです。
信頼を勝ち取る「教育系コンテンツ」の作り方
B2Bや高単価商材のマーケティングにおいて、最も重要な要素は「信頼(Trust)」です。100円のお菓子ならパッケージが可愛ければ売れますが、数十万円、数百万円、あるいは企業の運命を左右するようなB2Bサービスは、信頼なくして購入されません。
TikTokというエンタメの場で、いかにしてその「信頼」を勝ち取るか。その答えが「教育系コンテンツ」です。
高単価商材に必要なのは「面白さ」より「信頼」
TikTok運用と聞くと、多くの人が「面白くないといけない」「笑わせないといけない」と考えがちです。しかし、ビジネス目的のアカウントにおいて、過度なユーモアは不要です。むしろ、ふざけすぎると「この会社に仕事を頼んで大丈夫か?」という不信感に繋がるリスクすらあります。
私たちが目指すべきポジションは「芸人」ではなく「先生(専門家)」です。
ユーザーは、自分の悩みや課題を解決してくれる専門家を探しています。「この人の話は勉強になる」「この会社は業界のことを深く理解している」と思わせることができれば、それがそのままブランドへの信頼になります。
面白さを追求するのではなく、「役に立つこと」「気付きを与えること」に全振りをしてください。地味でも構いません。情報の真正性と専門性こそが、B2Bにおける最大のエンターテインメントになります。
専門家ポジションを確立する「課題解決型」台本
では、具体的にどのような構成で動画を作ればよいのでしょうか。私が推奨しているのは「課題解決型」のフレームワークです。短い時間で論理的に情報を伝えるために、以下の4ステップで台本を構成します。
- プロブレム(問題提起)
ターゲットが抱えている悩みや、「やってはいけない間違い」を指摘します。 例:「御社のWebサイト、ただの会社案内になっていませんか?」 例:「税務調査で否認されやすい経費、トップ3をご存知ですか?」 - アジテーション(煽り・共感)
その問題を放置するとどうなるか、あるいは「なぜその悩みが深いのか」を語り、当事者意識を高めます。 例:「これだと、広告費をいくらかけてもドブに捨てるようなものです。」 例:「多くの経営者がここで間違え、数百万円の追徴課税を支払っています。」 - ソリューション(解決策・ノウハウ)
ここで専門家としての「答え」を提示します。具体的かつ、すぐに使える知識であるほど良いです。出し惜しみはいけません。 例:「重要なのは、ファーストビューで『誰に何を売るか』を3秒で伝えることです。具体的には…」 例:「対策としては、領収書の裏書きだけでなく、〇〇という書類をセットで保管することです。」 - ベネフィット(未来の提示)
解決策を実行することで得られる未来を伝えます。 例:「これで、寝ていても問い合わせが来るWebサイトに変わります。」
この流れで作られた動画は、視聴者に「なるほど!」という納得感を与えます。この「納得感」の積み重ねが、「この会社に相談したい」という動機形成に繋がるのです。
ターゲットの悩みを言語化し、共感を生む冒頭2秒
TikTokなどのショート動画では、開始「2秒」で勝負が決まります。指一本でスワイプされる世界において、最初の2秒で「これは自分に関係ある動画だ」と思わせなければ、どれだけ素晴らしいノウハウを語っていても誰にも届きません。
B2Bにおける最強のフック(掴み)は、「ターゲットを名指しすること」と「悩みの言語化」です。
「営業担当の方、聞いてください」「年商1億円を超えた経営者の方へ」といった具体的な呼びかけや、「採用コストが高すぎて頭を抱えていませんか?」「部下がすぐに辞めてしまう本当の理由」といった、ターゲットが心の中で叫んでいる悩みをそのまま言葉にします。
専門用語を使っても構いません。むしろ、B2Bの場合は業界用語を使うことで、ターゲット以外の層(一般人や学生)を意図的に弾き、ターゲット層だけに「おっ、これは専門的な話だ」と足を止めさせる効果があります。これを「ターゲティング・フィルタリング」と呼びます。
「属人性」を出すことで企業の透明性を高める
B2B企業の中には、社員の顔出しを躊躇するところもあります。しかし、動画マーケティングにおいて「人」が出ることのパワーは絶大です。
特にコンサルティングや高額商材は、最終的に「誰から買うか」が重要になります。「どんな人が担当してくれるのか」「社長はどんな考えを持っているのか」が見えることは、安心感に直結します。
美男美女である必要は全くありません。清潔感があり、誠実に話す姿勢があれば十分です。AI音声や文字だけの動画も可能ですが、信頼構築のスピードという点では、やはり人間が自分の言葉で語る動画には勝てません。顔出しが難しい場合は、手元だけを映したり、プレゼン資料を映しながら声で解説したりする方法もありますが、可能な限り「中の人」の気配を感じさせる演出を心がけてください。
認知から問い合わせへ プロフィールへの誘導とCTAの最適化
動画が再生され、信頼を獲得できても、そこで終わってしまってはただの「ボランティア」です。Webマーケターとしての腕の見せ所はここからです。動画視聴者を、いかにスムーズに「プロフィール」へ誘導し、そこから「自社サイト(LP)」へクリックさせるか。この導線設計が勝敗を分けます。
動画を見た後にユーザーが取る行動を設計する
ユーザーの行動心理を想像してください。 「ためになる動画だったな」と思ったユーザーが次に取る行動は、大きく分けて2つです。 一つは、そのまま次の動画へスワイプすること。 もう一つは、「この人は他にどんな動画を出しているんだろう?」とアイコンをタップしてプロフィール画面に行くことです。
私たちが狙うのはもちろん後者です。そのために必要なのが、動画の最後に入れるCTA(コール・トゥ・アクション=行動喚起)です。
プロフィールへの遷移率を高めるCTA(コール・トゥ・アクション)
「フォローしてね!」という定型文だけでは弱すぎます。B2B運用におけるCTAは、もっと具体的で、ユーザーにメリットがあるものでなければなりません。
例えば、「もっと詳しい事例はプロフィールのリンクから」「〇〇に関する無料ガイドブックを配布中」といったように、プロフィールに行く「理由」を作ってあげることが重要です。
また、動画の尺(長さ)の使い方も重要です。TikTokでは動画がループ再生されますが、最後の1秒まで情報を詰め込みすぎると、余韻がなく、ユーザーが行動する隙間がありません。最後に1〜2秒ほど、CTA専用のカット(「続きはプロフィールへ」などのテロップと矢印が表示される画面)を入れることで、ユーザーの視線をアイコンやプロフィール文へ誘導することができます。
バイオ(プロフィール文)は企業の「顔」ではなく「案内所」
プロフィール画面に飛んでくれたユーザーが見るのが、バイオ(自己紹介文)です。ここで多くの企業が、「経営理念」や「抽象的なスローガン」を書いてしまっています。これは非常にもったいないです。
TikTokのプロフィール文は、ポエムを書く場所ではなく、ユーザーへの「案内所」です。限られた文字数の中で、以下の3点を明確に伝える必要があります。
誰の(ターゲット)
どんな悩みを解決する専門家で(提供価値)
リンクをクリックすると何が得られるか(オファー)
例えば、「誠実・信頼・感謝」と書くのではなく、「【B2B製造業専門】3ヶ月で商談数を倍にするWeb集客のプロ。明日から使える営業トーク術を発信中。↓無料のWeb診断はこちら」と書くのです。
一目で「自分にとってメリットがあるアカウントだ」と認識させなければ、ユーザーはすぐに離脱し、二度と戻ってきません。
リンククリックのハードルを下げる工夫
プロフィール文の下にあるURLリンク。ここがTikTok運用における最大の関門であり、ここをクリックしてもらうことが、SNS運用の第一段階のゴール(コンバージョン)と言えます。
しかし、ユーザーは心理的に「外部サイトに飛ばされる」ことを警戒します。「怪しいサイトじゃないか?」「売り込まれるんじゃないか?」という不安があるからです。
このハードルを下げるために有効なのが、「リードマグネット(無料プレゼント)」の活用です。
いきなり「個別相談の予約」や「有料セミナーの申し込み」をオファーしても、ハードルが高すぎます。まずは、「業界動向レポート(PDF)」「チェックリスト」「無料の動画講義」など、ユーザーが気軽に受け取れる無料の価値を用意しましょう。
「プロフィールのリンクから、〇〇のテンプレートを無料でダウンロードできます」という案内であれば、クリック率は劇的に向上します。まずは小さな「イエス」をもらい、リスト(LINEやメールアドレス)を獲得する。本格的なセールスはその後のステップで行う。これがB2Bマーケティングの鉄則です。
このリンク先となる「LP(ランディングページ)」の質が低ければ、せっかく誘導したユーザーを逃すことになります。次章では、そのLP制作と改善について詳しく解説します。
ここが勝負所!LP制作とLPOでCV数を最大化する
TikTokのプロフィールリンクがクリックされた瞬間、ユーザーは「TikTokというアプリ」から「あなたの会社の敷地」へと足を踏み入れます。ここで待ち受けるページ(LP)の出来栄えが、すべての努力を成果に変えるか、無駄にするかを決定づけます。
残念ながら、TikTok運用で失敗する企業の多くが、動画のクオリティにはこだわる一方で、リンク先のLPがおろそかになっています。ここでは、TikTokからの流入に特化したLP戦略を解説します。
TikTokからHP(ホームページ)トップに飛ばしてはいけない理由
最も避けるべきなのは、リンク先を自社の「公式ホームページのトップ」に設定することです。これは、せっかく興味を持って来店したお客様を、広大で地図のない巨大迷路に放り込むようなものです。
コーポレートサイトには、会社概要、採用情報、IR情報、複数の事業案内など、雑多な情報が混在しています。TikTokを見て「このノウハウが知りたい」「この資料が欲しい」という特定のモチベーションで訪れたユーザーにとって、それらの情報はノイズでしかありません。「どこに欲しい情報があるかわからない」と感じた瞬間、ユーザーは「戻るボタン」を押し、離脱します。
必要なのは、動画で提案した内容(オファー)だけを専門に扱い、余計なリンクを一切排除した「ランディングページ(LP)」です。出口を「申し込みフォーム」一つに絞り、一直線に誘導するページを用意する必要があります。
スマホ特化・動画ファーストなLP制作のポイント
TikTokからの流入は、ほぼ100%がスマートフォン経由です。PCでの閲覧を前提としたデザインは、ここでは通用しません。文字が小さすぎたり、タップしにくいボタン配置だったりするだけで、CVR(コンバージョン率)は激減します。
「スマホ特化」であることは当然として、さらに意識すべきは「動画ファースト」な世界観の統一です。ユーザーは動画を見てテンションが上がっている状態です。LPのファーストビュー(最初に表示される画面)にも、動く要素や、TikTok動画のトーン&マナーに合わせたデザインを取り入れることが有効です。
静止画とテキストだけの長いページよりも、冒頭に「30秒でわかるサービス解説動画」を埋め込んでおくほうが、TikTokユーザーとの親和性は高いです。文字を読むのが苦手な層でも、動画なら見てくれます。LP内でも動画を活用し、滞在時間を延ばす工夫を凝らしてください。
ファーストビューでの離脱を防ぐキャッチコピーとデザイン
LPにおいて最も重要なのは、ヘッダー画像(ファーストビュー)です。ユーザーはページを開いて「3秒以内」に、自分に関係があるページかどうかを判断します。ここで期待と違うものが表示されれば、スクロールすることなく去っていきます。
ここで重要なのが、TikTok動画の訴求と、LPのキャッチコピーの「整合性」です。 動画で「営業マンの教育コストをゼロにする方法」と語っていたのに、LPを開いた瞬間に「創業50年の信頼と実績」というコピーが出てきたらどうでしょうか。ユーザーは「話が違う」「求めていた情報ではない」と感じます。
動画で使った「強い言葉(パワーワード)」を、そのままLPのヘッドコピーにも使用してください。「動画の続きがここにある」と直感的に理解させることが、離脱を防ぐための唯一の防衛策です。
LPO(ランディングページ最適化)なくして広告費の回収なし
LPは一度作って終わりではありません。むしろ、公開してからが本当の勝負です。これをLPO(Landing Page Optimization)と呼びます。
最初は仮説で作ったページも、実際にアクセスを流してみると、予想外の場所で離脱されていたり、全く読まれていないセクションがあったりします。これを放置するのは、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。
TikTok運用にかかる人件費や制作費も一種の「広告費」です。その投資対効果を最大化するためには、LPの成約率を1%でも、0.1%でも高める努力が必要です。CVRが1%のLPと2%のLPでは、同じ再生数でも売上が2倍違います。この差はビジネスにおいて決定的です。
ヒートマップ分析とABテストでCVRを0.1%ずつ積み上げる
では、具体的にどう改善すれば良いのでしょうか。必須のツールが「ヒートマップ」です。これは、ユーザーがページのどこを熟読し、どこでクリックし、どの位置で離脱したかを色で可視化するツールです。
ヒートマップを見て、「この説明部分は全員が飛ばしている(青くなっている)」とわかれば、そのセクションは削除するか、もっと魅力的な表現に変える必要があります。逆に、「このお客様の声はよく読まれている(赤くなっている)」なら、もっと上の目立つ位置に移動させるべきです。
また、「ABテスト」も有効です。キャッチコピーをA案とB案の2パターン用意し、どちらがより多く申し込みに繋がるかをテストします。ボタンの色を緑にするか赤にするか、無料プレゼントの内容を変えるか。こうした細かな検証を繰り返し、数字という事実に基づいて改善を続けることこそが、Webマーケターの仕事です。感覚に頼らず、データでLPを磨き上げてください。
LINE公式アカウントやメルマガとの連携事例
LPでのゴールは「商品の購入」だけではありません。特にB2Bや高単価商材の場合、LPを見たその場で数百万円の契約を決める人は稀です。まずは「連絡先(リスト)」を預かり、時間をかけて教育していくステップが必要です。
高額商品は「即決」されない前提で組む
B2Bサービスや不動産、高額コンサルティングなどは、検討期間が長くなります。社内稟議が必要だったり、競合他社と比較したりする時間が必要だからです。
そのため、TikTokから直接の購入(クロージング)を狙うのは得策ではありません。最初のゴールは、LINE公式アカウントの友だち追加や、メールマガジンの登録といった「ハードルの低いアクション」に設定しましょう。
これを「リードナーチャリング(見込み客の育成)」と呼びます。一度リストに入ってもらえれば、こちらからプッシュ型の通知を送ることができます。TikTokのアルゴリズムに依存せず、好きなタイミングで情報を届けられる状態を作ることが、安定した売上の基盤となります。
リストマーケティングへのスムーズな移行
LINE公式アカウントは、特に日本国内のB2Cや個人事業主向けの商材で圧倒的な開封率を誇ります。メールは見なくてもLINEは見る、というユーザーが多いからです。一方、堅実なB2B(対大企業)の場合は、ビジネスメールでのやり取りが好まれる傾向にあります。
ターゲットに合わせて使い分けますが、最近のトレンドとしては、LP上で「LINE登録で特典を受け取る」というオファーが最もCVRが高くなる傾向にあります。
ユーザーにとっても、メールアドレスを入力するより、LINEのボタンをタップする方が手軽だからです。まずはLINEに引き込み、そこから必要に応じて法人情報をヒアリングしていく流れがスムーズです。
ステップ配信による教育と信頼関係の構築
リストを獲得したら、「ステップ配信(Lステップなどのツールを活用)」を組みます。これは、登録したタイミングに合わせて、あらかじめ用意しておいたメッセージを順序よく自動配信する仕組みです。
例えば、以下のようなシナリオを組みます。
1日目(登録直後): お礼のメッセージと、約束していた無料特典(動画やPDF)の送付。
2日目(課題の共有): ターゲットが抱える悩みに共感し、なぜその問題が起きるのかの理論的解説。
3日目(事例紹介): 自社のサービスを使って成功した他社の事例を紹介し、「自分もこうなれる」というイメージを持たせる。
4日目(オファー): ここで初めて、無料相談会やセミナーの案内を送る。
5日目(背中を押す): よくある質問への回答や、限定性をアピールして申し込みを促す。
このように段階を踏むことで、ユーザーの熱量を徐々に高め、信頼関係が構築された状態でクロージングに入ることができます。この仕組みさえ作ってしまえば、TikTokで動画を投稿するだけで、自動的に商談の予約が入る「自動集客装置」が完成します。
実際の成功事例:コンサルティング・不動産における導線
最後に、私が支援したクライアントの実例を2つ紹介します。
事例A:B2B向けコスト削減コンサルティング
TikTok動画: 「経理担当が知っておくべき節税の落とし穴」などのノウハウを発信。
プロフィール誘導: 「5つのチェックリストを無料配布中」
LP&LINE: LINE登録でチェックリストPDFを配布。
ステップ配信: 3日間の動画講座を配信し、自社の専門性を証明。
成果: 以前はテレアポで疲弊していたが、現在は月間30件の「話を聞きたい」という熱いリードが自動で集まり、成約率も20%から50%に向上。
事例B:投資用不動産の販売
TikTok動画: 物件のルームツアー動画ではなく、「不動産投資で失敗する人の特徴」という啓蒙動画を発信。
プロフィール誘導: 「失敗しないための非公開物件リストはこちら」
LP&メルマガ: メールアドレス登録で会員限定サイトへ招待。
ステップ配信: 定期的に優良物件情報と、市況解説のコラムを配信。
成果: 再生数は平均2,000回程度だが、毎月数件、億単位の物件購入相談がWeb経由で発生。広告費をかけずに高収益体質へ転換。
TikTokは最強の「飛び道具」であり「資産」になる
ここまで、B2B・高単価商材のためのTikTok運用戦略を、KGI設定から動画制作、そしてLP・リスト連携まで網羅的に解説してきました。
TikTokは単なる「暇つぶしアプリ」ではありません。ビジネスの現場において、これほど効率よく、かつ深くターゲットの懐に入り込めるツールは他にありません。
動画資産が24時間365日営業してくれる未来
一度投稿した動画は、インターネット上に残り続けます。あなたが寝ている間も、商談している間も、動画は回り続け、見込み客に御社の魅力を語りかけ、教育し、連れてきてくれます。それは、24時間365日文句も言わずに働き続ける、最強の営業マンを何人も雇うことと同じです。
この「動画資産」を積み上げられる企業と、そうでない企業の差は、時間が経つほどに開いていきます。
まずは小さく始めて、高速でPDCAを回す
最初から100点の動画を作る必要はありません。まずはスマホ一台で、目の前の顧客の悩みに答える動画を一本撮ることから始めてください。
市場の反応を見ながら、タイトルを変え、話し方を変え、LPを改善する。このPDCAのサイクルを回し続けた先に、競合他社が追いつけないほどの「集客力」と「ブランド」が待っています。
Webマーケティングの世界は動きが早いです。「いつかやろう」ではなく、今この瞬間が、参入のベストタイミングです。ぜひ、このファネル設計図を手に、TikTokという新たな市場を切り拓いてください。
企業や店舗が動画を制作し活用する方法 マーケティングの目的に合わせてショート・長尺それぞれの特性を活かして集客につなげるコツ





